「目の下が茶色くなってきた」「フードを替えたほうがいい?」と気になりますよね。犬の涙やけは病名ではなく、目からあふれた涙で被毛が赤茶色に着色した状態です。この記事では、先に確認したい受診サイン、主な原因、安全なケア、フードを見直す前の考え方を解説します。
涙やけに気づいたら、まず何を確認する?
最初に見るのは汚れの濃さではなく、目そのものに痛みや異常がないかです。次の表を目安に、迷う場合は動物病院へ電話して受診時期を相談してください。
| 愛犬の様子 | 行動の目安 |
|---|---|
| 目を細める・閉じたまま、しきりにこする、強い赤み、白濁、外傷、急な見え方の変化 | 当日中に動物病院へ連絡してください。夜間は救急病院へ相談します |
| 黄色や緑色の目やに、におい、目の下の赤みやただれ、片目だけ急に涙が増えた | できるだけ早く診療時間内の受診を相談してください |
| 痛みや赤みはないが、涙が続く・以前より増えた・何度も繰り返す | 写真と経過を記録し、早めにかかりつけ医へ相談してください |
目を細める、閉じる、こする、赤くなるといった変化は、眼の不快感を示すサインです(出典: American College of Veterinary Ophthalmologists「Signs of Ocular Discomfort in Your Pet」)。角膜の傷や眼圧の異常など、早い確認が必要な病気でも見られます。涙やけ落としを試すより、受診を優先しましょう。
犬の涙やけはなぜ起こる?
涙は目の表面を守り、通常は目頭にある小さな開口部から鼻涙管(涙を鼻へ流す管)へ排出されます。涙の量が排出できる量を上回ると、目の下へあふれる「流涙症(りゅうるいしょう)」になります。涙が被毛に残り、涙に含まれる色素によって赤茶色に見えるのが涙やけです。
原因は、大きく「涙が増える」「うまく排出できない」の2つに分けて考えます。
| 原因のグループ | 動物病院で確認する主な例 |
|---|---|
| 目への刺激や病気 | 逆さまつげ、まぶたや被毛の接触、異物、結膜の炎症、角膜の傷など |
| 涙の通り道の問題 | 鼻涙管の詰まりや炎症、生まれつき開口部がない・狭い状態など |
| 顔立ちやまぶたの形 | 鼻が短い犬種の眼球やまぶたの形、目頭の被毛が涙を吸い上げる状態など |
| 目の表面を守る力の低下 | ドライアイなど、涙の量や質が安定せず目やに・刺激が生じる状態 |
鼻涙管の病気には、炎症で生じた物質、異物、周囲からの圧迫による閉塞などがあります。生まれつき涙の出口が開いていない状態は、若い犬の流涙の原因になることがあります(出典: Merck Veterinary Manual「Disorders of the Nasal Cavity and Tear Ducts in Dogs」)。
短頭種などでは顔の構造が涙の排出に影響し、原因に対応してもある程度の涙が続く場合があります。一方、「この犬種だから見た目だけの問題」とは限りません。新しく始まった、片側だけ悪化した、痛みを伴う場合は、犬種にかかわらず診察を受けましょう。
片目だけと両目では原因が違う?
片目だけ急に涙が増えた場合は、その側の異物、傷、まぶた、鼻涙管の問題などを確認します。両目に同じように続く場合は、顔立ちや両側に影響する刺激も候補になります。ただし、左右差だけで原因は診断できません。
写真を撮るときは、正面から両目が入る1枚と、左右それぞれの目元を残します。始まった日、目をこする回数、目やにの色、散歩やシャンプーとの関係もメモすると、診察で経過を伝えやすくなります。
家庭でできる安全な目元ケアは?
痛みや強い赤みがなく、獣医師から日常ケアでよいと案内されている場合は、目の周りを清潔で乾いた状態に保ちます。
- 手を洗う: 清潔なガーゼや柔らかいコットンを用意します。
- 固まりをふやかす: ぬるま湯で湿らせたガーゼを、目の中に入れず被毛の固まりへ短時間当てます。
- 目から離れる向きに拭く: こすらず、目頭から頬側へやさしく動かします。左右の目で同じガーゼを使い回しません。
- 水分を残さない: 最後に乾いたガーゼで被毛の水分を軽く取ります。
固まった目やにを無理に引っ張ると、皮膚や被毛を傷めることがあります。目にかかる毛のカットが必要なときは、動く犬の目元で家庭用のはさみを使わず、動物病院や安全に対応できるトリマーへ相談してください。
使わないほうがよいものは?
過酸化水素、漂白成分、人用の目薬、獣医師が確認していない涙やけ除去剤を目の近くへ使わないでください。目元用と表示された商品でも、すでに赤みや傷がある場合は刺激になる可能性があります。使用前に成分と使い方を獣医師へ確認します。
抗菌薬を美容目的で長く使う方法も自己判断では行いません。細菌感染がある場合の薬は、診察と検査に基づいて獣医師が選ぶものです。以前処方された点眼薬の残りを使い回すと、病気によっては悪化させるおそれがあります。
動物病院では何を調べる?
診察では、涙やけの色を消すことより、涙があふれる原因を探します。一般に、次のような確認や検査を状態に応じて組み合わせます。
- 目、結膜、まぶた、まつげ、目の周りの被毛の観察
- シルマー涙液試験(ろ紙で涙の量を測る検査)
- フルオレセイン染色(角膜の傷や涙の排出を確認する色素検査)
- 必要に応じた眼圧測定
- 鼻涙管の通過確認や洗浄、画像検査
フルオレセインは角膜表面の傷や鼻涙管の通りを調べるために使われます(出典: Merck Veterinary Manual「Diagnostic Tests Pertaining to Ocular Medications in Animals」)。鼻涙管の洗浄には鎮静や麻酔が必要な場合があります。検査内容は年齢、症状、痛み、左右差を見て獣医師が判断します。
ドライアイは「涙が少ないなら涙やけとは無関係」と思われがちですが、目の表面が不安定になり、赤み、痛み、粘りのある目やになどが出ることがあります(出典: University of Illinois College of Veterinary Medicine「Don’t Overlook Dry Eye in Dogs」)。見た目だけで区別せず、涙の量を測ることが大切です。
涙やけはフードで改善する?おすすめの選び方は?
涙やけだけを理由に、特定の原材料や銘柄がすべての犬に合うとはいえません。目への刺激や鼻涙管の問題が原因なら、フードの変更だけでは原因への対応にならないためです。「無添加」「グレインフリー」「涙やけ対策」といった表示だけで、効果を判断しないようにしましょう。
まず、現在のフードが愛犬の年齢に合う総合栄養食か、食べる量と体重が安定しているかを確認します。WSAVA(世界小動物獣医師会)は、フード選びで主食に必要な栄養を満たすかに加え、栄養設計者、品質管理、製品研究などをメーカーへ確認する考え方を示しています(出典: WSAVA「Guidelines on Selecting Pet Foods」)。原材料一覧の印象だけでなく、栄養の適合性と製造体制を見ましょう。
顔や耳、足先のかゆみ、繰り返す外耳炎、嘔吐や軟便などもある場合は、食物アレルギーを含む別の問題を獣医師が検討することがあります。食物アレルギーは、獣医師が選んだ食事だけを一定期間与え、その後に元の食事へ戻した反応まで確認する除去食試験で診断します(出典: AAHA「2023 AAHA Management of Allergic Skin Diseases in Dogs and Cats Guidelines」)。
市販フードを短期間で次々に替えると、原因の切り分けが難しくなります。療法食やサプリも自己判断で始めず、普段のフード、おやつ、味付きの薬を受診時に伝えてください。かゆみもある場合は「犬がかゆがる・皮膚が赤いときは?」も参考になります。
よくある質問
涙やけは放っておいても大丈夫?
体質や顔立ちによる着色だけのこともありますが、涙やけは目の刺激や涙の通り道の異常でも起こります。初めて気づいたとき、悪化したとき、片目だけのときは一度診察を受けると安心です。痛み、赤み、白濁があれば早めに連絡してください。
水を替えると涙やけが消える?
水の種類を替えればすべての犬の涙やけがなくなる、という十分な根拠は確認されていません。飲み水はいつでも清潔なものを用意し、涙が増える原因は目と涙の排出経路から確認しましょう。
茶色くなった毛は拭けば白く戻る?
表面の汚れは落ちても、すでに着色した毛がすぐ元の色へ戻るとは限りません。新しく伸びる毛を清潔に保ちながら、涙が続く原因へ対応します。強くこすったり、刺激のある薬剤で漂白したりしないでください。
子犬のころから涙が多いのは体質?
顔立ちの影響もありますが、生まれつき涙の出口が開いていないなど、若い犬で確認される涙の通り道の問題もあります。「体質」と決めつけず、健康診断の際に相談してください。
出典
- American College of Veterinary Ophthalmologists「Signs of Ocular Discomfort in Your Pet」
- Merck Veterinary Manual「Disorders of the Nasal Cavity and Tear Ducts in Dogs」
- Merck Veterinary Manual「Nasolacrimal and Lacrimal Apparatus in Animals」
- Merck Veterinary Manual「Diagnostic Tests Pertaining to Ocular Medications in Animals」
- University of Illinois College of Veterinary Medicine「Don’t Overlook Dry Eye in Dogs」
- World Small Animal Veterinary Association「Guidelines on Selecting Pet Foods」
- American Animal Hospital Association「2023 AAHA Management of Allergic Skin Diseases in Dogs and Cats Guidelines」
本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替ではありません。愛犬の目や皮膚の状態に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。痛みや急な変化がある場合は、夜間救急を含む動物病院へ連絡してください。サイト全体の方針は免責事項をご確認ください。