「食卓の野菜や果物を、愛犬にも少し分けてあげたい」と思うことはありませんか。犬が食べていい食材は少なくありませんが、「その食材ならいくらでも安全」ということではありません。同じりんごでも、果肉は与えられる一方で種と芯は避ける、というように条件がつきます。この記事では、身近な野菜・果物・肉や乳製品の可否を一覧表にまとめ、与えるときの量と下ごしらえの条件、そして一覧にない食材を自分で調べる4つのステップを、獣医療の資料をもとに整理します。
まず結論:食べていい食材にも3つの条件がある
- 量: 与えていい食材でも、1日の総カロリーの10%以内が目安です(出典: WSAVA、Tufts大学 獣医栄養サービス、AAHA)。主食の総合栄養食で栄養バランスは足りており、それを崩さないための上限です。
- 部位と調理法: 食材そのものが安全でも、種・芯・皮・骨・葉などの部位や、味付け・油・加熱の有無で危険度が変わります。
- その子の状態: 持病・アレルギー・服薬中の犬では、健康な成犬に問題のない食材でも適さないことがあります。
迷ったとき、一覧に載っていないときは、与えないでおくのがいちばん安全です。すでに食べてしまい、危険な食材の可能性があるなら、症状がなくても、できるだけ早く動物病院に相談してください。夜間は救急動物病院へ。
食材名から危険度を調べたいときは、犬が食べてはいけない物チェッカーで、危険・注意・基本OKの目安と対応を出典つきで確認できます。
犬が食べていい食材の一覧
以下は、健康な成犬に少量を与える場合の目安です。いずれも味付け・油・調味料を使わないことが前提になります。缶詰や加工品は食塩や砂糖が加えられていることが多いため、生鮮の食材を使ってください。
野菜
| 食材 | 与え方の条件 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| にんじん | 生でも加熱でも。細く切るか薄切りにする | かたい輪切りのままだと丸のみで詰まらせることがあります |
| きゅうり | 生のまま小さく切る | 漬物やピクルスは塩分が強いため与えません |
| さやいんげん | 生・蒸す・茹でるいずれでも | 缶詰は食塩が加えられていることがあります |
| ブロッコリー | 少量を茹でて、小房を細かく刻む | 量が増えると胃腸を刺激する成分が問題になるとされます |
| セロリ | 筋を取り、小さく切る | 繊維が残ると飲み込みにくくなります |
| グリーンピース | 生か冷凍のものを少量 | 缶詰は食塩が加えられていることがあります |
| 赤パプリカ | ヘタと種を取り、小さく切る | 辛味のあるとうがらし類は与えません |
| ズッキーニ | 蒸すか茹でて小さく切る | — |
| かぼちゃ | 加熱して皮と種を除き、つぶすか小さく切る | 糖質が多く、体重管理中はとくに少量に |
| さつまいも | 加熱して小さく切る。味付けはしない | 同じく糖質が多めです。生のままは消化しにくくなります |
| ほうれん草 | 与えるならごく少量を茹でて | シュウ酸が多く、AKCは他の野菜を勧めています。無理に与える必要はありません |
熟した赤いトマトの実は少量なら与えられますが、茎・葉・青い実にはソラニンが含まれるため、家庭菜園の株には近づけないでください(出典: ASPCA)。
果物
| 食材 | 与え方の条件 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| りんご | 種と芯を必ず除き、小さく切る | 種・芯・葉はシアン化合物のもとを含みます |
| いちご | ヘタを取り、少量を | 練乳やジャムをかけたものは与えません |
| バナナ | 皮をむいて少量を | 糖分が多く、おやつ扱いにとどめます |
| ブルーベリー | そのまま少量を | — |
| すいか | 皮と種を除いて少量を | 皮と種は腸に詰まるおそれがあります |
| メロン | 皮と種を除いて少量を | 糖分が多く、体重管理中や糖尿病の犬はとくに控えめに |
| 梨 | 種と芯を除き、小さく切る | 種にはシアン化合物のもとが含まれます |
| 桃 | 種を必ず除き、果肉を少量 | 大きな種は喉や腸に詰まる危険があります |
| みかん | 外皮・薄皮・種を除いた果肉を少量 | 皮や種は刺激が強いとされます |
| パイナップル | 固い皮と芯を除いて少量を | 缶詰やシロップ漬けは与えません |
肉・魚・卵・乳製品・穀類
| 食材 | 与え方の条件 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| 鶏むね肉・七面鳥 | 皮と骨を除き、加熱して味付けせずに小さく裂く | 加熱した骨も生の骨も危険です(出典: WSAVA) |
| 赤身の牛肉 | 脂身を除き、加熱して味付けせずに | 脂肪の多い部位は消化器の負担になります |
| 魚(鮭・ひらめなど) | 骨を完全に取り、蒸すか焼く。油と調味料はなし | まぐろ・めかじきなど長寿命の魚は水銀の懸念があります |
| 卵 | 完全に加熱したものを少量 | 生卵は細菌のリスクがあります |
| プレーンヨーグルト・チーズ | 与えるならごく少量 | 犬は乳糖を分解しにくく、下痢の原因になります。チーズは高カロリーです |
| 白米 | 水で炊いた味付けなしのものを少量 | 糖質が多く、糖尿病の犬には日常的には与えません |
上の表は、AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)とTufts大学 獣医栄養サービスが公開している食材リスト、ASPCA(米国動物虐待防止協会)動物中毒管理センターの注意喚起、WSAVA(世界小動物獣医師会)のおやつガイドをもとに作成しました。肉・魚・卵・乳製品は、これらの資料が「危険な食材」として挙げていない一方、加熱不足や骨、乳糖、カロリーの注意点を示しているものです。積極的に推奨されている食材という意味ではありません。リンクは記事末尾の出典にまとめています。
一覧にない食材はどう調べる?4つのステップ
食材の種類は無数にあり、一覧ですべてを網羅することはできません。次の4つを順に確認すると、はじめての食材でも判断しやすくなります。
ステップ1: 「与えてはいけない食材」に当たらないか確認する
まず危険側から確認します。玉ねぎ・ねぎ類・にんにく、ぶどう・レーズン、チョコレート、キシリトール、マカダミアナッツ、アルコール、生のパン生地、コーヒーなどは、少量でも中毒を起こすことがあるとされています(出典: WSAVA、ASPCA)。これらは「量を減らせば大丈夫」という食材ではありません。
食材名で確認するなら犬が食べてはいけない物チェッカーが使えます。
ステップ2: 「食材そのもの」と「部位・調理法」を分ける
一覧を見て混乱しやすいのが、同じ食材で情報が食い違って見えるケースです。多くは、見ている部位や調理法が違うことが原因です。
| 食材 | 与えられる部分 | 避ける部分・状態 |
|---|---|---|
| りんご | 果肉 | 種・芯・葉 |
| トマト | 熟した赤い実 | 青い実・茎・葉 |
| 鶏肉 | 加熱した肉 | 骨・皮・味付けした料理 |
| かぼちゃ | 加熱した果肉 | 大きな塊のままの丸のみ |
| 魚 | 加熱した身 | 生食・小骨・油で調理したもの |
「◯◯は犬に与えてもいい?」と調べるときは、部位・生か加熱か・味付けの有無まで一緒に確認してください。
ステップ3: 量が1日の10%以内に収まるか計算する
安全な食材でも、量が増えれば主食の栄養バランスが崩れます。おやつやトッピングは1日の総カロリーの10%以内が目安です(出典: WSAVA、Tufts大学、AAHA)。まず愛犬の1日の総カロリーを知る必要があるため、フード給与量計算ツールで目安を確認すると計算しやすくなります。
ステップ4: 情報源を確かめる
犬の食材情報はサイトによって結論が違うことがあります。次の3点を目安にすると、信頼できる情報を選びやすくなります。
- 獣医療機関・獣医学系大学・獣医師会など、出典が示されているか。
- 「絶対に安全」「必ず大丈夫」と言い切っていないか。個体差への言及があるか。
- 持病がある犬・子犬・シニア犬について、獣医師への相談を促しているか。
そのうえで、判断がつかない食材は与えないでおくのが確実です。犬が野菜や果物を食べなくても、総合栄養食を食べていれば栄養が不足するわけではありません。総合栄養食とは「毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフード及び水のみで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養的にバランスのとれたもの」と定義されています(出典: ペットフード公正取引協議会)。
与えるときの下ごしらえと量の決め方
下ごしらえの基本
- 小さく切る: 丸のみによる窒息や、喉・腸の詰まりを防ぎます。とくに超小型犬・小型犬では細かく刻みます。
- 味付けをしない: 塩・しょうゆ・砂糖・油・バター・香辛料は使いません。人の味付けは犬には濃すぎます。
- かたい野菜は加熱する: いも類やかぼちゃは加熱するとやわらかくなり、消化しやすくなります。
- はじめての食材は1種類ずつ、ごく少量から: 複数を同時に試すと、体に合わなかったときに原因が分からなくなります。与えた後は、便のかたさや嘔吐、かゆみの有無を確認してください。
量は「グラム」ではなく「カロリー」で考える
人の食材は、見た目の量が少なくてもカロリーが高いものがあります。WSAVAの資料には、犬に与えられがちな人の食材のカロリーが示されています。
| 食材 | 量 | 目安のカロリー |
|---|---|---|
| 皮なしの鶏むね肉(加熱) | 28g | 約47kcal |
| 赤身の牛肉(加熱) | 28g | 約64kcal |
| ハム | 28g | 約46kcal |
| チェダーチーズ | 28g | 約120kcal |
| ピーナッツバター | 大さじ1 | 約81kcal |
出典: WSAVA「Feeding treats to your dog」。数値は目安であり、商品や部位によって変わります。
たとえば体重5kgの避妊・去勢済みの成犬なら、1日の総カロリーの目安は約374kcalで、その10%は約37kcalです。上の表に当てはめると、チェダーチーズならおよそ9gで上限に達します。体重別の数値は犬のおやつは1日どれくらい?にまとめています。
野菜や果物は比較的低カロリーですが、それでも主食を減らさずに追加すれば総量は増えます。トッピングとして毎日与えるなら、その分だけ主食を減らして調整してください。
10%以内に収めるために量る
野菜や果物を「ひとつまみ」で判断すると、日によって量がぶれます。同じ単位で量ると、1日の総カロリーの10%以内に収まっているかを確認しやすくなります。価格や在庫は変動するため、購入前に各販売ページで最新情報をご確認ください。
商品は量を確認するための道具です。食材そのものの可否や、持病がある犬に適した食事内容は、かかりつけの獣医師にご相談ください。
「食べていい」でも注意したいケース
危険な食材は犬の届かない場所へ
食べていい食材と危険な食材は、たいてい同じ台所に並んでいます。玉ねぎやぶどう、チョコレートは、調理中でも犬の届かない場所に置いてください。人の料理の取り分けは、玉ねぎやだし・調味料が入っていることが多く、避けたほうが安全です。
持病・体質によって適さないことがある
Tufts大学は、健康な犬に問題のないおやつでも、病気のある犬には適さない場合があるとして、獣医師への相談を勧めています。次のような場合は、与える前にかかりつけの獣医師へ確認してください。
| 状態 | 気をつけたい理由 |
|---|---|
| 腎臓・心臓・肝臓の病気 | ミネラルや水分、たんぱく質の制限が必要なことがあります |
| 糖尿病 | 糖質の多い果物やいも類で血糖値が上がりやすくなります |
| 膵炎の既往、脂質の異常 | 脂肪の多い肉やチーズが負担になることがあります |
| 食物アレルギー・食物不耐性 | 特定の食材でかゆみや消化器症状が出ることがあります |
| 療法食を食べている | 追加した食材が食事療法の目的を妨げることがあります |
| 薬を飲んでいる | 食材が薬の吸収に影響することがあります |
子犬・シニア犬も注意が必要です。子犬は成長に必要な栄養バランスがくずれやすく、シニア犬は飲み込む力や消化の力が落ちていることがあります。
こんなときは動物病院へ
与えた後に次のような様子が見られたら、自宅で様子を見続けず、動物病院に相談してください。
- 繰り返す嘔吐や下痢、血の混じった便
- ぐったりしている、呼びかけへの反応が鈍い
- 苦しそうな呼吸、えずくしぐさが続く、口の中を気にする
- 顔の腫れ、じんましん、強いかゆみ
- 危険とされる食材を食べた、または食べた可能性がある
よくある質問
野菜や果物は毎日与えたほうがいいですか?
必須ではありません。総合栄養食は、それと水だけで指定された成長段階の健康を維持できるよう設計されています(出典: ペットフード公正取引協議会)。野菜や果物は、低カロリーのおやつやコミュニケーションの手段として使う位置づけと考えると分かりやすくなります。
生と加熱では、どちらがいいですか?
食材によって異なります。にんじんやきゅうり、さやいんげんは生でも与えられます。一方、いも類やかぼちゃ、ブロッコリーは加熱するとやわらかく、消化しやすくなります。肉・魚・卵は、細菌のリスクを避けるため必ず加熱してください(出典: ASPCA、AKC)。
「犬用」と書かれていない人の食材を与えてもいいですか?
一覧にある食材を、味付けせず少量与える範囲であれば、健康な成犬では大きな問題になりにくいとされています。ただしWSAVAは、人の食べ物や食卓の残り物は犬にとって健康的でなく、危険な場合もあると指摘しています。日常的に取り分ける習慣にはしないでください。
少しだけなら、玉ねぎが入った料理も大丈夫ですか?
避けてください。玉ねぎ・ねぎ類は、犬の赤血球を壊して貧血につながることがあるとされています(出典: ASPCA)。加熱しても毒性は残るとされており、スープやだし、ハンバーグなど「玉ねぎの形が見えない料理」も同じです。食べてしまった場合は、食べた量とおよその時間を控えて動物病院に相談してください。
与えた後、どのくらい様子を見ればいいですか?
はじめての食材では、その日から翌日にかけて、便のかたさ、嘔吐の有無、皮膚のかゆみを確認すると変化に気づきやすくなります。決まった観察時間があるわけではないため、いつもと違う様子があれば時間にかかわらず動物病院に相談してください。
出典
- WSAVA(世界小動物獣医師会)「Feeding treats to your dog」(おやつは1日のカロリーの10%未満、危険な食材、人の食材のカロリー)
- Tufts大学 獣医栄養サービス「Treat Options for Dogs and Cats Without Unbalancing Their Diet(Petfoodology)」(低カロリーの野菜・果物、持病がある場合の相談)
- American Animal Hospital Association(AAHA)「2021 Nutrition and Weight Management Guidelines」(総合栄養食90%以上・おやつ10%以下)
- AKC(アメリカン・ケネル・クラブ)「Fruits and Vegetables Dogs Can and Can’t Eat」(野菜・果物ごとの可否と条件)
- AKC「Can Dogs Eat Fish?」(魚の与え方と避けたい魚種)
- AKC「Can Dogs Eat Rice?」(米の与え方と糖尿病の犬への注意)
- ASPCA(米国動物虐待防止協会)「People Foods to Avoid Feeding Your Pets」(危険な食材、乳製品・生肉・骨)
- ASPCA「Toxic and Non-Toxic Plants」(りんご・桃・トマト・バナナ・いちご・きゅうり・さつまいもの分類)
- ペットフード公正取引協議会「総合栄養食とライフステージについて」(総合栄養食の定義)
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、獣医師による診断・治療の代替ではありません。食材の適否は犬の年齢・体格・持病・服薬によって変わります。愛犬の食事に不安がある場合は、かかりつけの獣医師にご相談ください。サイト全体の方針は免責事項をご確認ください。