「無添加」「ヒューマングレード」と書かれた袋を見ると、良さそうに思えますよね。ただ、この2つは同じ重みの言葉ではありません。**「無添加」には日本の表示ルールがあり、「ヒューマングレード」には日本の定義がありません。**この記事では、それぞれが何を示して何を示さないのかを、表示ルールの条文と獣医栄養学の資料で確認します。袋の前で自分で見分けるための手順としてお読みください。
【結論】「無添加」「ヒューマングレード」は何を保証している?
パッケージの目立つ言葉は、次のように整理できます。
| 袋の言葉 | 日本のルール | 表示が示すこと | 表示が示さないこと |
|---|---|---|---|
| 無添加・不使用 | 公正競争規約にあり | 併記された原材料・添加物を使っていないこと | 栄養バランス・原材料の品質・安全性の差 |
| ナチュラル | 公正競争規約にあり | 化学的合成物と着色料を使っていないこと(例外あり) | 栄養バランス・原材料の品質・安全性の差 |
| ヒューマングレード | 定義なし | メーカーが独自の基準で名乗っていること | 人が食べられること・栄養バランス |
| 総合栄養食 | 公正競争規約にあり | そのフードと水で、表示された成長段階の栄養が足りること | 愛犬個体への相性・嗜好性 |
読み取り方の要点は3つです。
- 「無添加」は、何が無添加なのかが併記されて初めて成立する表示です。単に「無添加」とだけ書かれた袋は、その時点で確認が必要になります。
- 「ヒューマングレード」は名乗る側の基準次第です。何をもってそう呼んでいるのかを、メーカーの説明で確かめます。
- どの言葉も、そのフードが愛犬に合うかどうかまでは示しません。主食を選ぶなら「総合栄養食」と成長段階を先に確認します。
なお、公正競争規約は業界の自主ルールで、参加していない事業者には及びません(適用範囲は後述します)。
体調に気になるところがあるときや、療法食を検討しているときは例外です。表示を見比べる前に、かかりつけの動物病院へ相談してください。
「無添加」と表示できる条件は決まっている?
決まっています。日本のペットフードには「ペットフードの表示に関する公正競争規約」という業界ルールがあり、「無添加」「不使用」はその中で使い方が定められた特定用語のひとつです。ただし業界の自主ルールなので、及ぶ範囲には限りがあります(この節の最後で説明します)。
何が無添加なのかを併記しないと表示できない
規約の施行規則は、「無添加」「不使用」やこれに類する用語について、無添加である原材料名等が明確に併記されていることを条件にしています。そのうえで、添加物についての表示なら、「ペットフードの表示のための添加物便覧」に載る添加物を一切使用していないことが確認できる場合に限られます。
この「一切」には、加工助剤、キャリーオーバー、栄養強化目的で使われるものも含まれます(出典: ペットフード公正取引協議会「ペットフードの表示に関する公正競争規約」施行規則第7条第4号)。キャリーオーバーとは、一般に、原材料に含まれていた添加物が最終製品まで持ち込まれるものの、そこでは効果を発揮しない量にとどまる場合を指します。
つまり、この基準に沿った「着色料無添加」は、原材料由来の持ち込みまで含めて確認したという意味になります。ただし、これは規約に参加している事業者の場合の話です(適用範囲はこのあとの節で説明します)。
逆にいうと、何が無添加なのかが書かれていない「無添加」表示は、この基準に沿った表示にはなっていません。袋に「無添加」の3文字しかないときは、メーカーの商品ページで対象を確認するのが安全です。
もうひとつ、規約は不当表示の例も挙げています。抗生物質など、ペットフードに通常は使われない原材料や添加物について「不使用」「無添加」を強調し、それによって品質が優れているかのように誤認させる表示です。通常は使われないものの「無添加」を、そのまま品質の比較材料にはできません(同規約 施行規則第8条第1号)。
「ナチュラル」「天然」「フレッシュ」はルールが違う
同じ規約の中でも、言葉ごとに条件は異なります。混同しやすい3つを分けておきます。
- ナチュラル: 原則として、化学的合成物と着色料を使っていないものに限られます。例外は総合栄養食・療法食・総合栄養食の基準を満たす旨を表示する間食の3種類です。この3種類では、栄養バランス上欠かせないビタミン類・ミネラル類・アミノ酸類だけに化学的合成物を使う場合にかぎり表示できます。ただし、その旨を「ナチュラル」等の最も目立つ表示の4分の1以上の文字サイズで明瞭に併記すること(内容量500g以下は6ポイント、500g超は8ポイントを下回らない)、および油脂の酸化防止にエトキシキン・BHA・BHTなどの合成酸化防止剤を使っていないことが条件です(施行規則第7条第5号)。「ナチュラル」のそばに添えられた但し書きは、この規定によるものです。
- 天然・自然: 客観的な根拠がないまま使うことは、不当表示の例に挙げられています(施行規則第8条第1号)。
- 新鮮・フレッシュ・生: 製品全体を指してこれらを表示することは、不当表示の例に挙げられています(施行規則第8条第2号)。
「ナチュラル」の条件に合成酸化防止剤が含まれている点は、あとの章とつながります。規約に沿うかぎり、「ナチュラル」表示と、油脂の酸化防止に使う合成酸化防止剤は同じ袋に共存できない建て付けになっています。
このルールはすべての商品に及ぶ?
ここは押さえておきたい前提です。公正競争規約は、景品表示法にもとづいて業界が自主的に設定するルールで、規約に参加していない事業者には適用されません。消費者庁も、参加事業者のみが遵守する義務を負うと説明しています(出典: 消費者庁「公正競争規約」)。
ペットフード公正取引協議会の会員は、2026年4月1日現在で正会員78社・準会員4社の計82社です(出典: ペットフード公正取引協議会「概要」)。国内で流通するすべてのブランドが入っているわけではありません。
ただし、参加していない事業者が何を書いてもよいわけではありません。実際より著しく優良だと誤認させる表示は、景品表示法そのものの規制対象です。非参加事業者の不当表示には、消費者庁が景品表示法にもとづいて措置を採ります(同前)。
「ヒューマングレード」に決まった定義はある?
この記事で確認した範囲ではありません。ペットフード安全法にも、公正競争規約が定める特定用語(栄養成分の多寡・推奨・受賞・無添加/不使用・ナチュラル)にも、ヒューマングレードは含まれていません。名乗るための認証制度もありません。同じ「ヒューマングレード」でも、メーカーごとに指している範囲が違いえます。
米国には任意の基準がある
参考になるのが米国の考え方です。AAFCO(米国飼料検査官協会)は「human grade」を定義しており、その要点は次のとおりです。
- 製品全体についてのみ使える用語であり、「ヒューマングレードの原材料を使用」という表現も、製品全体がヒューマングレードである場合にだけ認められる。
- すべての原材料と最終製品が、人用食品の法令(21 CFR part 117 など)に沿って保管・取り扱い・加工・輸送されている。
- 最終製品を製造・包装する施設が、動物用食品施設としてだけでなく人用食品施設としても登録されている。
- 上記を裏づける文書を保管し、求めに応じて提示できる。
(出典: AAFCO「AAFCO Standard for “Human Grade” Pet Food」)
これは米国の任意基準です。**日本で売られている商品に自動的に当てはまるものではありません。**国産品でも輸入品でも、この基準を満たしているかどうかは別に確認する必要があります。
メーカーの説明で確かめたい3点
「ヒューマングレード」を判断材料にしたいなら、言葉ではなく中身を見ます。メーカーの公式サイトや問い合わせ窓口で、次の3点を確認してください。
- 範囲: 原材料の一部を指しているのか、全原材料なのか、製造工程まで含むのか。
- 根拠: 人用食品として扱える基準をどの法令・規格で満たしているのか。
- 工場: 最終製品を作る施設が、人用食品の製造施設としても許可・登録を受けているのか。
答えが得られないときは、その言葉を選ぶ理由から外し、後述の総合栄養食の表示に判断を戻します。
ヒューマングレードでも栄養バランスは別の話
見落としやすい点です。原材料が人の食品と同じ品質であることと、犬にとって栄養バランスが取れていることは、まったく別の条件です。人が食べられる食材だけで作っても、犬に必要な栄養素の量や比率を満たしていなければ、毎日の主食にはできません。
WSAVA(世界小動物獣医師会)も、規制されていない販促用語は栄養面の評価にほとんど役に立たないとしています(出典: WSAVA Global Nutrition Committee「Guidelines on Selecting Pet Foods」)。主食を選ぶなら、まず「総合栄養食」の表示と成長段階を確認します。
酸化防止剤は入っていないほうが安全?
「無添加」を探すとき、多くの方が気にするのが酸化防止剤です。ここは不安が先に立ちやすいところなので、役割から順に見ていきます。
何のために入っているのか
ドライフードには脂肪が多く含まれ、脂肪は酸化します。酸化防止剤は、その脂肪の劣化を防ぎ、味・栄養価・安全性を保つために使われます。タフツ大学のリサ・フリーマン獣医師は、保存料や酸化防止剤はドライフードに不可欠だと説明しています(出典: Tufts University Cummings School of Veterinary Medicine, Petfoodology「“Preservative-Free” Pet Food?」2022年9月19日)。
つまり、酸化防止剤が入っていること自体は、品質管理をしている証でもあります。「入っていない=良い」と単純に置き換えられるものではありません。
合成の酸化防止剤はどう評価されている?
エトキシキン・BHA・BHTといった合成の酸化防止剤には、不安の声があります。実験動物での発がん性を指摘する情報が広く出回っており、気になるのは自然なことです。
一方で、フリーマン獣医師は、これらの合成酸化防止剤についてそうした健康影響が科学的に立証された証拠はないと述べています。そのうえで、多くのドライフードで使われなくなったのは害の証拠が出たためではなく、天然由来を求める消費者の需要によるものだと説明しています(出典: 同前)。
日本では、ペットフード安全法(愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律)の成分規格で上限が定められています。エトキシキン・BHA・BHTの合計で150μg/g以下、犬用のエトキシキンは75μg/g以下です(出典: 環境省「ペットフード安全法基準規格等」)。上限を超えたものは販売できません。
ただし、3つをひとまとめに評価することはできません。物質ごと、国ごとに判断が分かれています。EUでは、エトキシキンについて不純物の安全性を結論づけられないとして、2017年6月7日付の委員会実施規則で飼料添加物としての承認が停止されました(出典: 欧州連合「Commission Implementing Regulation (EU) 2017/962」)。日本と米国では上限つきで使用が認められており、扱いが異なります。
この記事では、どちらが優れていると断定はしません。確実にいえるのは、脂肪の酸化を防ぐ仕組みは何らかの形で必要だということです。合成のものを避けたいなら、代わりに何で酸化を防いでいるかを見ます。
天然由来の酸化防止剤は保存期間が短めになる
ミックストコフェロール(ビタミンE)、ローズマリー抽出物、クエン酸などが天然由来の酸化防止剤として使われます。フリーマン獣医師は、これらは合成のものほど強力ではないため、保護が持続する期間も長くはないとしています(出典: 同前)。
だからこそ、天然由来を選ぶときは賞味期限と保存方法の重みが増します。同じ記事では、ドライフードで本当に酸化防止剤がゼロなら、安全性の面で懸念があるとも述べられています。「人工保存料無添加」と「保存料無添加」は、意味する範囲が違う可能性があります。
袋のどこで酸化防止剤を確認する?
原材料名の欄です。公正競争規約は、添加物のうち酸化防止剤・保存料・着色料・甘味料・増粘安定剤・発色剤として使ったものには、用途名も併記するよう定めています。「酸化防止剤(ミックストコフェロール)」のような書き方になります(出典: ペットフード公正取引協議会「ペットフードの表示に関する公正競争規約」施行規則第3条第7号)。
ただし、この記載義務はメーカーが使用した添加物についてのもので、加工助剤は対象外です。加工助剤とは、製造の過程で除去されるものなど、最終製品への影響がないものを指します。原材料にもともと含まれていて持ち込まれるキャリーオーバーも、原材料名からは読み取れません。
つまり、原材料名に書かれていないことは「その添加物がまったく含まれていない」ことまでは意味しません。規約に沿った「○○無添加」であれば、○○について加工助剤・キャリーオーバー・栄養強化目的まで含めて使っていないことを確認した表示になり、確認の範囲は広がります。ただし、どちらの表示も検査してまったく含まれないことを保証するものではありません。
開封後は保存で酸化を抑える
酸化は、開封したあとの家庭でも進みます。とくに天然由来の酸化防止剤を使ったフードでは、保存の影響が出やすくなります。難しいことは必要ありません。
- 袋のクリップやジッパーでしっかり口を閉じる。
- 直射日光と高温多湿を避け、涼しく乾燥した場所に置く。
- 食べきれる容量を選ぶ。大袋が割安でも、消費に時間がかかるなら小分けを検討する。
- 賞味期限と、袋に書かれた開封後の保存方法を確認する。
容器を使うときは、中身を移し替えるより袋ごと容器に入れるほうが扱いやすくなります。米国FDAも、購入時の袋のまま保存することをすすめており、容器へ移す場合はロット番号・製品名・賞味期限を控えておくよう案内しています。不具合やリコールがあったときに、どの製品かを特定できるようにするためです(出典: U.S. Food and Drug Administration「Proper Storage of Pet Food & Treats」)。
1袋を何日で使い切れるかは、内容量と1日の給与量から計算できます。
フードコスパ比較計算ツールで1袋がもつ日数と1日あたりの実コストを確かめる
表示を確認したあと、何を見ればいい?
「無添加」「ヒューマングレード」の意味が分かったら、判断の軸を袋の表面から裏面へ移します。順番は次のとおりです。
- 目的: 主食にするなら「総合栄養食」であること。間食・その他の目的食は同じ土俵で比べません。
- 成長段階: 幼犬期・成犬期・全成長段階など、愛犬の時期に合っていること。
- カロリーと給与量: 100gあたりのカロリーが分かれば、体重から1日の量を計算できます。
- メーカーの情報開示: 問い合わせに答えが返ってくるか。誰が設計しているか。
この4点の詳しい確認手順は、子犬用ドッグフードの選び方で子犬向けにまとめていますが、考え方は成犬でも同じです。カロリーが分かれば、1日に与える量の目安を計算できます。
フード給与量計算ツールで体重とカロリーから1日量の目安を確かめる
銘柄ごとの原材料・成分・カロリーを横並びで見たいときは、図鑑で比べられます。
表示だけで決めきれないときは、無理に決めずメーカーやかかりつけの獣医師へ確認してください。
無添加・ヒューマングレードでよくある質問は?
「無添加」と書いてあれば添加物はゼロですか?
いいえ、限りません。規約は「無添加である原材料名等」の併記を求めており、併記された対象についての表示です。「着色料無添加」なら着色料についての表示で、ほかの添加物は使われていることがあります。
まず、袋のどこに何が無添加と書かれているかを確認してください。対象が書かれていない場合は、メーカーの商品ページで確かめます。
逆に、原材料名に酸化防止剤が書かれていなければ、メーカーが添加物として使っていないと読めます。ただし加工助剤と、原材料から持ち込まれるキャリーオーバーは原材料名に出てきません。そこまで含めて確認したい場合は、基準に沿った「無添加」表示を探すか、メーカーへ直接確認してください。
「ヒューマングレード」なら人も食べられますか?
そう考えないでください。ドッグフードは犬に与えることを前提に作られており、人が食べる前提の製品ではありません。栄養設計も人の食事とは異なります。
「ヒューマングレード」は、あくまで原材料や工程の品質についてメーカーが示す説明です。日本に統一された定義はないため、範囲と根拠を個別に確認する必要があります。
酸化防止剤が入っているフードは避けるべきですか?
一律に避ける必要はありません。酸化防止剤は脂肪の劣化を防ぐために使われており、タフツ大学の資料でもドライフードに不可欠だと説明されています。日本では上限値も定められています。
合成のものが気になる場合は、避けることを目的にするより、代わりに何で酸化を防いでいるかを原材料名で確かめてください。天然由来の場合は保存期間が短めになるため、賞味期限と保存に気を配ります。
「無添加」のフードなら、食物アレルギー対策になりますか?
別の問題として考えてください。「無添加」は併記された添加物や原材料を使っていないという表示で、愛犬が反応する食材が入っていないことを示すものではありません。
食物アレルギーが疑われるときは、原因となる食材を特定する手順が必要です。詳しくは犬の食物アレルギーの症状と見分け方をご覧ください。自己判断で食事を制限する前に、動物病院へ相談してください。
「無添加 ドッグフード おすすめ」の上位商品を選べばよいですか?
順位は選ぶ基準になりません。「無添加」は品質の等級ではなく、併記された対象を使っていないという事実の表示だからです。同じ「無添加」でも、対象も栄養設計も商品ごとに違います。
まず総合栄養食かどうかと成長段階で候補を絞り、そのうえで無添加の対象・カロリー・メーカーの情報開示を比べてください。すべての候補に同じ順番を当てはめます。
出典
- ペットフード公正取引協議会「ペットフードの表示に関する公正競争規約・同施行規則」(規約は令和6年10月1日施行、施行規則は令和4年9月7日承認)
- ペットフード公正取引協議会「概要」(会員数は2026年4月1日現在)
- 消費者庁「公正競争規約」
- 環境省「ペットフード安全法基準規格等」
- Tufts University Cummings School of Veterinary Medicine, Petfoodology「“Preservative-Free” Pet Food?」(Lisa M. Freeman, DVM, PhD, DACVIM (Nutrition), 2022年9月19日)
- AAFCO「AAFCO Standard for “Human Grade” Pet Food」
- 欧州連合「Commission Implementing Regulation (EU) 2017/962」(2017年6月7日)
- U.S. Food and Drug Administration「Proper Storage of Pet Food & Treats」
- WSAVA Global Nutrition Committee「Guidelines on Selecting Pet Foods」(2021年3月10日更新)
法令・規約の内容は改定されることがあります。この記事の情報は2026年8月6日時点で確認したものです。
免責
この記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、獣医師による診断や治療の代替ではありません。
愛犬に合うフードや与える量には個体差があります。体調への不安があるとき、療法食を検討しているときは、かかりつけの獣医師に相談してください。