「出かける支度を始めると玄関に先回りする」「留守のあいだずっと鳴いていたと、近所の方に言われた」。留守番の悩みは、しつけの失敗だと責められやすく、ひとりで抱え込みがちです。つらいですよね。

この記事では、留守番中の困りごとが分離不安によるものかを見分ける観察のしかたと、不安を出さずに少しずつ慣らす手順を整理します。ただし、記事だけで分離不安と決めることはできません。まずは、練習より先に相談したほうがよいサインがないかを確認するところから始めます。

【結論】留守番できないとき、どこから手をつける?

順番を飛ばすと、効かない練習を長く続けることになります。次の4段階で進めてください。

順番何をするか
1. 危ないサインを確認する自傷、脱走、出口まわりの破壊があれば、練習より先に動物病院へ相談する
2. 留守中の様子を録画する推測ではなく映像で、いつ・何が起きているのかを確かめる
3. ほかの原因の可能性を整理して受診する退屈、トイレの未学習、外の音への吠え、身体の病気など、考えられる説明を書き出して獣医師に渡す
4. 不安が出ない長さから慣らす獣医師と方針を決めたうえで、不安が出る手前で戻る練習を重ねる

米国動物病院協会(AAHA)の行動管理ガイドラインは、分離不安を行動学的な緊急事態として扱うべきだとしています(出典: AAHA「2015 AAHA Canine and Feline Behavior Management Guidelines」)。「そのうち慣れる」と待つ理由はありません。気になった時点で相談してかまいません。

なお、この記事で挙げる観察項目は診断ではありません。当てはまる数を数えて分離不安と決めるためのものではなく、動物病院で伝える材料を整理するためのものです。

飼い主の観察だけで身体の病気を除いたり、原因を1つに絞ったりすることはできません。 痛みや内分泌の病気が、目に見える身体症状ではなく行動の変化だけで現れることがあり、身体の病気と行動の問題が同時に起きていることもあります。AAHA が示す診療の進め方でも、診断より前に身体検査と必要な検査を行うことが置かれています(出典: AAHA 前掲)。留守番に関わる行動が新しく始まった、繰り返す、生活に支障が出ているなら、危険なサインの有無にかかわらず、まずかかりつけに相談してください。

分離不安では、どんなサインが出る?

分離不安は、飼い主と離れているとき、または離れることを予期したときに現れる恐怖・不安の反応とされています(出典: MSD/Merck Veterinary Manual「Behavior Problems of Dogs」)。

よく見られるのは、歩き回る、荒い呼吸、吠える・遠吠え、室内での排泄、物を壊す、よだれが増える、といった様子です(出典: AAHA 前掲)。

出るタイミングにも特徴があります。多くは出発してから最初の15〜30分に集中し、飼い主が靴を履く、鍵を取る、玄関へ向かうといった準備の段階から始まる犬もいます(出典: Merck 前掲)。

壊す場所にも傾向があります。国内で承認されている分離不安の治療補助薬の添付文書では、破壊はドア、ドアの近くの壁、床、窓に集中しやすいと説明されています(出典: 農林水産省 動物医薬品検査所「動物用医薬品等データベース:クロミカルム錠5mg」)。

玄関の手前の廊下に座り、靴を履こうとしている飼い主の足元をじっと見ているパピヨン
出発の準備に犬がどう反応するかは、留守番が始まる前から観察できる手がかりです。

「後をついて回る」だけでは判断できません

家の中で飼い主について回る犬は、分離不安になりやすいと思われがちです。しかし Merck は、そうした密着した行動を見せる犬が、見せない犬より分離不安のリスクが高いわけではないとしています(出典: Merck 前掲)。

見分けるうえで役に立つのは、行動の種類よりも「飼い主がいるときにも起きるか」です。米国動物虐待防止協会(ASPCA)は、飼い主の目の前で排泄するなら、その粗相は分離不安によるものではない可能性が高いとしています。壊す、掘る、歩き回るについても、分離不安が原因なら飼い主がいるときには起きないのが普通だとしています(出典: ASPCA「Separation Anxiety」)。

分離不安ではない可能性はありませんか?

留守番中の困りごとには、ほかにも説明がつくものがあります。次の表は自分で除外するためのものではなく、受診時に「どれが当てはまりそうか」を伝えるための整理として使ってください。Merck も、分離不安と診断するには、トイレの未学習、探索的な遊びや拾い食い、外の刺激による興奮や不安、音への嫌悪、閉じ込めへの不安といった、よくある原因を除外する必要があるとしています(出典: Merck 前掲)。

別の可能性見分けるポイント
退屈・運動や刺激の不足不安そうには見えない。出発直後より、時間が経ってからの探索やかじりが中心
トイレの未学習飼い主がいるときにも失敗する。排泄の間隔や場所がまだ安定していない
若い犬の破壊飼い主がいるときにも、かじる・掘るが見られる
外の刺激への吠え在宅時も、インターホン・足音・車など同じ刺激で吠える。刺激がやむと休める
音への恐怖雷、花火、工事など、特定の音や時間帯と一致する
閉じ込めへの不安在宅時でも、クレートやゲートの中に入れたときだけ暴れる
身体の病気突然始まった。多飲多尿、血尿、排尿時の痛み、歩きにくさ、食欲の変化を伴う
高齢による認知機能の低下夜中に起きる、家の中で迷う、人との関わり方が変わる、トイレを忘れる、などが一緒に出てきた

身体の病気との切り分けは、日本の獣医行動学の資料でも重ねて強調されています。東京大学附属動物医療センターの荒田明香氏による総説は、飼い主が問題行動として訴える内容のなかには、身体疾患の症状として行動の変化が現れている場合や、身体疾患と行動の問題が併発している場合があるため、各種検査に基づく鑑別診断が非常に重要だとしています。恐怖・不安に関わる問題行動では、中枢神経系・内分泌・代謝の病気、感覚器の異常、痛みを伴う病気との鑑別が必要だとも書かれています(出典: 荒田明香「犬における問題行動」動物臨床医学 26(3):98-100, 2017)。

先ほどの治療補助薬の添付文書にも、**「問題行動を示す犬が全て分離不安ではないので、獣医師は慎重に分離不安の診断を行うこと」**という一文があります(出典: 動物用医薬品等データベース 前掲)。獣医師向けの注意書きですが、飼い主が自己判断で決めないほうがよい理由としても読めます。

近年は、留守番中の問題をひとつのものとして扱うことへの疑問も示されています。すでに留守番中の問題が出ている犬762頭分の飼い主アンケートを解析した研究は、留守番に関連する問題をいくつかの異なるタイプに分けて捉えるべきだと提案しています(出典: de Assis LS ほか「Developing Diagnostic Frameworks in Veterinary Behavioral Medicine: Disambiguating Separation Related Problems in Dogs」Frontiers in Veterinary Science 6:499, 2020)。「分離不安かどうか」の二択で考えず、留守番中に何が起きているかを見るほうが、次の一手を決めやすくなります。

留守中の様子はどうやって確かめる?

自分がいないあいだのことなので、想像で埋めるしかないように思えます。ここで役に立つのが録画です。

AAHA は、分離不安のサインは飼い主が気づけないことがあるとし、留守中の様子を録画して、目立ちにくい形の分離不安も見つけることをすすめています(出典: AAHA 前掲)。Merck も、録画は行動を観察し、ほかの不安のサインや別の診断につながる手がかりを見つけるための、きわめて有用な手段だとしています(出典: Merck 前掲)。

撮り方は次の4点で足ります。

  1. 出発の準備から、帰宅して落ち着くまでを通して録る。準備段階の反応が大事な手がかりになります。
  2. 犬が休む場所と玄関の両方が入る位置に置く。片方だけだと動きを追えません。
  3. 音も一緒に録る。外の音に反応しているのか、犬自身の声なのかを区別できます。
  4. 時刻が分かる設定にする。出発から何分後かを、後から数えられます。

見るポイントは「吠えたかどうか」だけではありません。

  • 出発してから、最初の変化まで何分あったか
  • そのとき何をしていたか(歩き回る/出口をひっかく/横になれた)
  • 途中で落ち着きを取り戻せたか、最後まで続いたか
  • 置いていったフードやおやつを食べられたか
リビングの床に座った飼い主が手元のスマートフォンで留守中の録画を見返し、そばのマットでパピヨンが伏せている
「何分後に、何をしていたか」をメモに残すと、次の練習をどこから始めるかを決められます。

限界を測るために長時間放置したり、パニックの様子を何度も撮り直したりはしないでください。録る範囲は自宅の室内にとどめ、共用廊下や近隣の方が写らないようにします。

なお、日本獣医動物行動学会は診察前に使える質問票を公開しています(出典: 日本獣医動物行動学会「統一質問用紙 イヌ」PDF)。荒田氏の総説も、情報を十分に集めるためにこの質問票の利用をすすめています(出典: 荒田 2017 前掲)。録画のメモと一緒に持参すると、限られた診察時間でも経過を伝えやすくなります。

動物病院にはどのタイミングで相談する?

分単位や吠えた回数で線を引ける共通の基準はありません。判断の軸は、けがの危険があるか、苦痛が強いか、身体の病気の可能性があるかの3つです。

愛犬の様子行動の目安
鼻・口・爪から出血する、歯が欠けた、脱走しようとしてけがをした、ガラスやコードを壊した、異物を飲み込んだ可能性があるすぐに動物病院へ連絡してください。夜間は救急動物病院へ
出発の準備だけでパニックになる、いちばん短い練習でも落ち着けない、クレートの中で暴れる自宅での練習を進めず、早めに相談してください
成犬で急に排泄の失敗が始まった、多飲多尿や血尿がある、高齢で夜鳴きや徘徊も出てきたまずかかりつけで、身体の病気がないかを確認してください
危険なサインはないが、留守番のたびに吠える・壊す・排泄する録画とメモを持って、診療時間内に相談する日を決めてください

自傷や脱走のおそれがあるあいだは、自宅での練習を続けないでください。AAHA の分離不安の症例手順も、犬を一頭で家に残さないことを最初の対応に挙げています。クレートで安全に過ごせるかを聞き取りや録画で確かめ、クレートの中でパニックになる、入るのを嫌がる(固まる、壊す、自分を傷つける)場合には、ペットシッター、デイケア、病院での預かりを検討するとしています(出典: AAHA 前掲)。

動物病院の診察室の床に落ち着いて伏せているパピヨンと、スマートフォンの映像を見せる飼い主の手元、白衣の獣医師の手元
録画とメモを持参すると、診察の場で「いつ・何が起きているか」を短時間で共有できます。

行動診療にはどこで相談できますか?

まずはかかりつけの動物病院で、身体の病気がないかを確認します。そのうえで行動の問題として扱う場合、日本獣医動物行動学会が獣医行動診療科認定医などが在籍する施設を地域別に公開しています(出典: 日本獣医動物行動学会「行動診療を行う施設(地域別一覧)」)。地域によって施設数に差があるため、かかりつけに紹介の要否を相談する流れが現実的です。

薬を使うのは「甘やかし」ですか?

そうではありません。国内では、クロミプラミン塩酸塩を成分とする動物用医薬品が、「飼い主から離れることに起因する分離不安(飼い主のいない間の破壊、吠えの行動ならびに不適切な場所での排便、排尿行動)治療の補助」という効能・効果で承認されています(要指示医薬品)。添付文書は「本剤は行動療法の補助として投薬すること」とし、治療には行動療法と投薬の併用が必要だとしています(出典: 動物用医薬品等データベース 前掲)。

つまり薬は、行動の練習を進めやすくするための選択肢であって、練習の代わりではありません。必要かどうか、どの薬をどれくらいの期間使うかは獣医師が判断します。この記事では用量や使い方は扱いません。人用の薬や、ほかの犬に処方された薬を自己判断で使わないでください。

不安を出さずに慣らすには、どう進める?

はじめに、どこまでを自宅でやってよいかをはっきりさせます。ASPCA は、軽い場合なら、安心できる決まった場所で好物と結びつける拮抗条件づけだけで和らぐことがあるとしています。一方で中等度から重度の場合はより複雑な脱感作と拮抗条件づけが必要で、訓練を受けた経験豊富な専門家の指導が必要だとしています。恐怖を出してしまうと逆効果になり、犬の反応は読み取りと解釈が難しいためです(出典: ASPCA 前掲)。

ですから以下は、自己流で最後まで進めるための手順書ではありません。何がどんな順番で行われるのかを知り、専門家と共有するための地図として読んでください。前の章の受診の目安に当てはまる場合は、練習より先に相談してください。

そのうえで、3つの原則を押さえてください。ここを外すと、練習が逆効果になります。

  1. 不安が出る手前で戻る。吠えるまで待つのは練習ではありません。
  2. 練習以外では一人にしない。Merck は、分離不安のある犬はできるだけ一人にしないことで、さらに敏感になる(感作)のを防ぐとしています。感作が起きると治療は難しくなります(出典: Merck 前掲)。家族の交代、シッター、預け先などを組み合わせます。ただし代わりの人や場所が使えるかは犬によります。Merck は、特定の人と離れることで苦痛を示す犬は、ほかの人がいても落ち着けないことがあるとしています(出典: Merck 前掲)。在宅中から少しずつ慣らし、短時間の利用を録画して落ち着けるかを確かめてから本番に使ってください。
  3. 一度に変えるのは1つだけ。時間、ドアの閉め方、時間帯を同時に変えないでください。

仕事や介護で、一人にする時間をどうしても避けられないこともあります。そのときに、足りない分を長時間の練習で埋めようとしないでください。避けられない留守の時間、頼める人と予算、預け先、録画で見えた反応を具体的にまとめて、かかりつけに当面の安全管理を相談します。近くに行動診療の施設がない場合は、紹介の可否、獣医師どうしの相談、遠隔での対応ができるかをかかりつけに確認してください。

手順1: いま不安が始まる地点を録画で探す

玄関を見る、食べるのをやめる、体が固まる。最初の小さな変化を探します。その手前が練習の出発点です。

手順2: 出発の合図を「出かけない合図」にも変える

鍵を持ってソファに座る、靴を履いて家事をする、上着を着てまた脱ぐ。ASPCA は、これを1日に何度も、何週間も繰り返し、その合図が必ずしも外出につながらないことを学ばせる方法を挙げています(出典: ASPCA 前掲)。国内の添付文書にも、外出しない日にも鍵や鞄を持ったりコートを着たりして、一連の動作に慣れさせるという同じ方法が書かれています(出典: 動物用医薬品等データベース 前掲)。

ただし、鍵の音だけで震えるほど反応が強い犬に何度も繰り返すのは適していません。その場合は自宅で押し進めず、専門家へ相談してください。

出発の合図への対応には、異なる考え方があります。Merck は中等度から重度について、これまで外出と結びついていない新しい物や音を「必ず戻ってくる短い外出」の合図(安全の合図)として使う方法を推奨しており、鍵や靴といった合図を切り離す従来の考え方とは異なると明記しています(出典: Merck 前掲)。

どちらを取るかを飼い主が自己判断で選んだり、混ぜたりしないでください。出発の準備の段階ですでに不安が見えるなら、獣医師か分離関連の問題に慣れた専門家と、個別の計画を決めてください。

手順3: 室内で姿が見えなくなる練習から、短い外出へ進む

いきなり玄関を使いません。ASPCA が挙げる順序は、まず家の中のドア越し(浴室など)に落ち着いて待つ練習をし、待つ時間を少しずつ延ばすことから始まります。次に寝室のドア、そのあとで玄関などの出口のドアへ進みます。いつも使う出口とは別のドアから練習するとよいとしています。

実際に外へ出る練習を足すのは、その段階まで来てからです。ASPCA はこの段階の例として1〜2秒から始めることを挙げ、5〜10秒まで延ばせたところで、出る直前に中身の入ったフードトイを渡す方法を示しています(出典: ASPCA 前掲)。ただしこれは一例で、開始時間は犬によって変わります。

手順4: 1回ごとに、完全に落ち着いてから次へ

続けざまに繰り返さないでください。ASPCA は、前の回の興奮が残ったまま次を始めると耐えにくくなり、かえって悪化しうるとしています(出典: ASPCA 前掲)。数分あけて、落ち着いたことを確かめてから次に進みます。出入りは静かに済ませ、いる時といない時の落差を小さくします。

床のマットの上で落ち着いて伏せているパピヨンと、少し開いた室内ドアの向こうに見える飼い主の足元
最初は玄関ではなく、家の中のドアから。犬が落ち着いていられる長さでいったん戻ります。

手順5: 不安のサインが出たら、短く戻す

瞳孔が開く、荒い呼吸、あくび、よだれ、震え、歩き回る、帰宅時に激しく出迎える。ASPCA はこれらをストレスのサインとして挙げ、見つけたら時間を短くして、落ち着ける段階からやり直すようすすめています。飼い主が早く進めたくて長すぎる時間にさらしてしまい、不安を強めて悪化させる失敗はよく起きるとも指摘しています(出典: ASPCA 前掲)。

どれくらいの時間・期間がかかりますか?

先に押さえておきたいのは、共通の時間表はないということです。ASPCA も「犬ごとに反応が違うため、標準的なタイムラインは存在しない」とし、いつ時間を延ばすかの判断は難しく、飼い主が誤りやすいところだとしています(出典: ASPCA 前掲)。

そのうえで、ASPCA が挙げている進行の一例は次のとおりです。最初の40分に不安の反応が集中するため、40分に届くまでは1回あたり数秒ずつしか延ばせません。40分を越えたら5分刻み、その後は15分刻みに広げます。90分を落ち着いて過ごせるようになれば4〜8時間も扱えるようになる「だろう」としつつ、まず4時間を試し、数日かけて8時間まで延ばすという慎重な進め方を添えています(出典: ASPCA 前掲)。90分を過ごせたことだけを根拠に、いきなり長時間へ延ばさないでください。

期間にも幅があります。ASPCA は、週末は1日に複数回、平日は1日2回の練習ができる場合には数週間で進むことがあるとしています。一方 Merck は、段階的な外出の練習は完了までに数か月かかることがあるとしています(出典: Merck 前掲)。どちらも目安で、犬によって変わります。

フードトイや環境づくりは、どこまで役に立つ?

フードトイは、練習を支える補助になります。加えて、観察の道具としても使えます。

AAHA の分離不安の症例手順は、在宅時にフードトイを与え、使えるようなら留守中にも出すとしたうえで、トイから出したフードを食べられるなら不安が和らいでいるサインであり、強い苦痛のある犬は食べられないとしています(出典: AAHA 前掲)。つまり「食べられたかどうか」が、その日の状態を測る手がかりになります。

床のマットに伏せて、前足で押さえた無地のゴム製フードトイを熱心に舐めているパピヨン
落ち着いて食べられているかどうかが、その日の不安の強さを測る手がかりになります。

安全に使うために、次の点を確かめてください。

  • 中に入れる分は、1日の食事とおやつの量から差し引く。追加ではありません(犬のフード給与量計算ツール犬のおやつは1日どれくらい?10%ルールと量の目安
  • 初めての製品を、いきなり留守番中に使わない。在宅で見ている前で、壊さないか、丸のみしないかを確かめます
  • 口の大きさと噛む力に合うサイズ・耐久性のものを選ぶ。破片、紐、ふたなどを飲み込むおそれがあるものは使わない
  • 多頭飼育では、取り合いにならないかを確かめる
  • 療法食、食物アレルギー、持病がある場合は、入れる中身を獣医師に確認する

フードトイは、留守番への不安を治す道具ではありません。また、AAHA が述べているのは「食べられたなら不安が和らいでいるサインの一つ」という一方向の関係です。食べなかったことだけでは、不安の強さも分離時間の長さも判断できません。満腹だった、味が好みでなかった、トイの使い方にまだ慣れていない、体調が悪いといった説明もあります。録画に写った姿勢、呼吸、歩き回り、鳴き声と合わせて見て、普段から食べない場合や体調の変化があるときは獣医師に相談してください。

クレートも万能ではありません。ASPCA は、クレートを安心できる場所として学べた犬には役立つ一方、別の犬にはかえって強い不安になるとしています。激しい呼吸、大量のよだれ、必死に出ようとする、鳴き続けるといった様子があれば向かないと判断し、ベビーゲートで一部屋に区切る方法を挙げています(出典: ASPCA 前掲)。

白いペットゲートで仕切られた部屋の中で、床のマットに落ち着いて伏せているパピヨンと、そばに置かれた白い水入れ
クレートで落ち着けない犬でも、ゲートで一部屋に区切れば動ける範囲を保てます。水も置いておきます。

出かける前の運動と、日中の適度な刺激も助けになります(出典: ASPCA 前掲)。ただし、運動だけで分離の不安が解けるわけではありません。

フードを詰められる中空ラバートイ

中にフードを入れて、犬が転がしながら少しずつ食べる形のラバートイです。メーカーは知育トイの使い方として、遊ばせている間は目を離さないことを挙げています。価格や在庫は変動するため、購入前に各販売ページで最新情報をご確認ください。

リッチェル グルー ベンド SS オレンジの商品画像

フードを入れられるラバートイ

リッチェル グルー ベンド SS オレンジ

中にフードを入れて、犬が転がしながら少しずつ食べる合成ゴム製のトイ。12×4.5×4.5H(cm)、体重目安6kg以下。内側のツメで少しずつフードが出る作りで、ツメをカットして穴を大きくすると出方を変えられます(一度切ると戻せません)。

体重目安6kg以下の超小型犬向けサイズ(12×4.5×4.5H(cm)・合成ゴム)。入れる量と、ツメをカットして穴を広げることで出方を調整できます。6〜9kgには同じ形のSサイズがあります。

Amazonで見る 楽天市場で見る

中に入れる分は、1日の食事とおやつの量から差し引いてください(追加ではありません)。初めての製品は在宅で見ている前で使い、壊さないか・丸のみしないかを確かめてください。メーカーが目を離さないことを挙げているため、留守番中に使うかは製品の注意書きと獣医師の指示に従って判断してください。フードトイは、留守番への不安を治す道具ではありません。

やってはいけないことは?

  • 帰ってから叱る。国内の添付文書は、外出中に破壊や排泄があっても犬を叱らないよう明記しています(出典: 動物用医薬品等データベース 前掲)。荒田氏の総説も、恐怖・不安に関わる問題行動への環境調節として体罰や叱責の禁止を挙げています(出典: 荒田 2017 前掲)。ASPCA も、不安による行動は反抗や仕返しではなく、苦痛の反応だとしています(出典: ASPCA 前掲)。
  • 罰や強制的な器具を使う。AAHA は嫌悪的な手法に反対する立場をとり、正常な動物にも問題行動を生じさせ、苦痛のある動物では行動の障害の進行を早めるとしています。プロングカラーやチョークカラー、電気ショックカラー、アルファロール、餌を与えないこと、閉じ込め、叩くことを挙げ、いずれも使うべきでないとしています(出典: AAHA 前掲)。
  • 吠えやむまで放置する。これは脱感作ではなく、反応が出る強さの刺激にさらし続ける「フラッディング」です。AAHA は、反応が出ない強さにとどめる脱感作と違い、フラッディングは苦痛のある動物ではかえって刺激に敏感にさせ、状態を悪化させるとしています(出典: AAHA 前掲)。静かになったことは、落ち着いたこととは限りません。
  • いきなり長時間にする。練習で到達していない長さは、シッターや家族の交代で埋めます。
  • もう1頭迎えれば解決すると考える。特定の人と離れることが問題なら、別の犬がいても変わらないことがあります。ASPCA は、分離不安のある犬の多くは誰かがそばにいれば落ち着き、それは飼い主本人でなくてよいとしています(出典: ASPCA 前掲)。
  • サプリやフェロモンを先に試す。AAHA は、フェロモン製品について専門家の意見は一致しておらず、有効性を示す決定的な臨床研究の証拠は不足しているとしています(出典: AAHA 前掲)。中心となる対応の代わりにはしないでください。
  • 主従関係で説明するトレーナーに任せる。AAHA は、リードや首輪を強く引く、行動を「優位性(dominance)」で説明する、犬に物を投げるといった指導者であれば、トレーナーを替えるよう飼い主に助言するとしています(出典: AAHA 前掲)。

よくある質問

犬は何時間まで留守番できますか?

すべての犬に当てはまる安全な時間はありません。ASPCA も、犬ごとに反応が違うため標準的なタイムラインは存在しないとしています(出典: ASPCA 前掲)。年齢、健康状態、排泄の間隔、そして録画で確かめた「不安が出ない長さ」から決めてください。ASPCA の進行例に出てくる4〜8時間も、90分を落ち着いて過ごせるようになった後に、まず4時間から数日かけて試すという慎重な手順とセットで書かれた数字であり、到達すべき目標ではありません。暑い季節は、留守中の室温の管理も別に必要です(犬の熱中症の症状と対策)。

留守番中に吠えるだけでも分離不安ですか?

吠えだけでは判断できません。在宅時にもインターホンや足音で吠えるなら、外の刺激への反応かもしれません(出典: ASPCA 前掲)。出発との時間の関係と、ほかの不安のサインがあるかを録画で確かめてください。

帰宅したとき、犬を無視したほうがいいですか?

無視しなければならないという十分な根拠はありません。ASPCA が挙げているのは、出入りを穏やかに済ませ、いる時といない時の落差を小さくすることです(出典: ASPCA 前掲)。大げさに騒いで興奮をあおらなければ、短く静かに挨拶してかまいません。長時間そっけなくして愛情を断つ必要はなく、叱るのは逆効果です。個別の治療計画がある場合は、その指示を優先してください。

子犬のうちからできることはありますか?

あります。Merck は、日中に定期的に、安心できる場所で一人の時間を穏やかに過ごさせておくと、留守番への恐怖や不安が育つリスクを下げられるとしています(出典: Merck 前掲)。短い時間から、良い体験として重ねてください。

シニアになって急に留守番できなくなりました

年齢のせいと決めず、受診してください。荒田氏の総説は、高齢性認知機能不全の徴候として、見当識障害、社会的交流の障害、睡眠覚醒周期の障害、不適切な排泄、活動性の障害を挙げ、中枢神経系・内分泌・代謝の病気、感覚器の異常、関節の病気などとの鑑別が必要だとしています(出典: 荒田 2017 前掲)。痛みや感覚の低下が背景にあることもあります。

出典

  • American Animal Hospital Association「2015 AAHA Canine and Feline Behavior Management Guidelines」JAAHA 51(4):205–221, 2015(PDF)(分離不安の症状と行動学的な緊急事態としての扱い、診断より前に身体検査と検査を行うこと、脱感作とフラッディングの違い、留守中の録画の推奨、フードトイを食べられるかが不安の指標になること、クレートでパニックになる場合の代替、嫌悪的手法への反対、フェロモン製品の根拠、トレーナー選びの助言、社会的成熟期に受診を検討する行動の一覧)
  • MSD/Merck Veterinary Manual「Behavior Problems of Dogs」(分離に伴う苦痛の定義、出発後15〜30分に集中する症状、出発準備の合図、密着行動とリスクの関係、除外すべき原因、録画の有用性、感作を防ぐための対応、特定の人と離れる犬はほかの人がいても落ち着けないことがあること、安全の合図を使う段階的な外出練習と数か月かかりうること、子犬期に一人の時間へ慣らすこと、米国で承認された薬剤)
  • ASPCA「Separation Anxiety」(症状の一覧、飼い主が在宅かどうかによる切り分け、軽度と中等度〜重度で対応が分かれること、脱感作と拮抗条件づけには専門家の指導が必要なこと、標準的なタイムラインが存在しないこと、除外すべき行動上の問題と身体の病気、出発の合図への対応、1〜2秒からの分離練習とフードトイ、回と回のあいだの間隔、ストレスのサインと戻し方、40分・90分・4〜8時間の進め方と期間の目安、罰の否定、クレートの向き不向き、運動と刺激、ほかの人でも落ち着くこと)
  • 荒田明香「犬における問題行動」動物臨床医学 26(3):98-100, 2017(身体疾患との鑑別診断の重要性、恐怖・不安に関連する問題行動の分類と鑑別、体罰や叱責の禁止、系統的脱感作と拮抗条件づけ、国内で承認された治療補助薬、診察前質問票の活用、高齢性認知機能不全の徴候)
  • 農林水産省 動物医薬品検査所「動物用医薬品等データベース:クロミカルム錠5mg」(効能・効果、要指示医薬品であること、行動療法の補助として投薬すること、行動療法との併用が必要であること、すべての問題行動が分離不安ではないこと、外出前の動作に慣れさせる方法、外出中の行動を叱らないこと、破壊が集中しやすい場所)
  • 日本獣医動物行動学会「行動診療を行う施設(地域別一覧)」「統一質問用紙 イヌ」(国内で行動診療に対応する施設の探し方、診察前に整理しておく項目)
  • de Assis LS, Matos R, Pike TW, Burman OHP, Mills DS「Developing Diagnostic Frameworks in Veterinary Behavioral Medicine: Disambiguating Separation Related Problems in Dogs」Frontiers in Veterinary Science 6:499, 2020(すでに留守番中の問題が出ている犬を対象に、留守番に関連する問題を単一のものとせず複数のタイプに分けて捉える提案。一般の家庭犬における有病率の推定には使えない)

免責

本記事は一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替ではありません。分離不安かどうかの診断は、身体の病気の除外を含めて獣医師が行います。本記事の観察項目は診断の道具ではなく、動物病院で経過を伝えるための整理に使ってください。

示した秒数・分数・期間はいずれも目安で、年齢、健康状態、これまでの経験によって大きく変わります。愛犬に自傷や脱走のおそれがあるとき、身体症状を伴うとき、行動が急に変わったときは、自宅での練習を続けず動物病院へご相談ください。夜間は救急動物病院へ連絡してください。

薬の使用・変更・中止は、必ず獣医師の指示に従ってください。サイト全体の方針は免責事項をご確認ください。

関連記事