「新しいフードも数口で飽きる」「おやつは飛んでくるのに、ドライフードは残す」。食いつきの悩みは、銘柄を替えても替えても振り出しに戻りやすいところです。心配ですよね。

この記事は、動物病院で健康上の問題がないと確認できている犬を対象に、食いつきの考え方と対策を試す順番を整理します。まだ受診していないなら、次の章の表で相談の目安を確認するのが最初の一歩です。歯の病気のように飼い主が気づけない原因もあるため、「症状が見えない」ことは健康の確認になりません。

【結論】食いつきが悪いとき、どの順番で考える?

順番を飛ばすと、効かない対策を延々と試すことになります。次の3段階で考えてください。

順番何をするか
1. 受診が必要なサインを確認する下の表に当てはまるものがあれば、対策より先にかかりつけへ相談する
2. 体質か、与えすぎかを切り分ける元気・体重・体型が保てているか、1日量が多すぎないかを確認する
3. 環境 → 与え方 → フードの順に試す食事の場所と時間 → 出し方とトッピング → フードそのもの、の順に1つずつ変える

多くの飼い主が3の最後(銘柄を替える)から手をつけますが、後述するとおりフードの種類を増やすこと自体が食いつきを不安定にしうると指摘されています。順番を守ると、何が効いたのかを切り分けやすくなります。

なお、どの段階でも食べない状態が続く、摂取量が落ちる、体重が減るなら、対策を続けずにかかりつけへ相談してください。

動物病院に相談したほうがいいのはどんなとき?

タフツ大学獣医学部の獣医栄養チームは、犬の食への熱心さについて、次のいずれかに当てはまるなら獣医師に相談すべきだと案内しています(出典: Tufts University Cummings School「Some dogs live to eat…」2026年2月20日)。

愛犬の様子行動の目安
食べる量が減った・えり好みするのが最近始まった行動であるかかりつけへ相談してください
フードを替えた直後、または新しい袋・缶・ロットを開けた直後であるかかりつけへ相談してください
元気がない、沈んでいる、力が入らない、散歩でペースが落ちる、様子がおかしいかかりつけへ相談してください
意図せず体重が減っているかかりつけへ相談してください
体型(BCS)が9段階で4未満である(4〜5が理想とされます)かかりつけへ相談してください
背中などの筋肉が落ちてきたかかりつけへ相談してください
急に食べなくなった、嘔吐・下痢・ぐったりを伴うこの記事の工夫を試さず、動物病院へ連絡してください。夜間は救急動物病院へ

「食べない」は多くの病気に共通するサインで、家庭で原因を決めることはできません。 VCA動物病院の解説は、犬を「偏食」と判断する前に、獣医療チームの助けを借りて背景にある病気を除外することが大切な最初の一歩だとしています。食欲に影響しうる例として挙げられているのは、歯の病気(歯ぐきの下で起きていて目には見えないことがある)、腎臓の病気異物や消化器の不調関節炎(シニアでは痛みのために食器まで行くのがつらいことがある)です(出典: VCA Animal Hospitals「My Dog Won’t Eat: Feeding Picky Eaters」2025年3月3日更新)。痛み止めや抗生物質などの一部の薬が食欲を変えることもあるため、使っている薬・サプリメントの一覧を用意しておくと原因を絞りやすくなります(出典: Tufts University Cummings School「How Do I Get My Picky Pet to Eat?」2017年3月16日)。

体重については、VCAは脱水によらない体重減少が通常体重の10%を超えると臨床的に重要とされ、減り方が速いほど懸念が強いと説明しています(出典: VCA Animal Hospitals「Abnormal Weight Loss in Dogs」)。ただしこれは10%まで家庭で待ってよいという線ではありません。意図しない減少の傾向が見えた時点で相談してください。

体型の確認は自宅でもできます。判断の物差しをそろえておくと、獣医師にも伝えやすくなります。

肥満度チェック(BCS判定)で、今の体型の目安を確認する

急に食べなくなったときの受診の目安と初動、夏に食べる量が落ちたときの切り分け、シニアで食欲が落ちたときの考え方は、それぞれ別の記事で扱っています。

食べないのは「体質」?それとも「与えすぎ」?

上の表に当てはまるものがなく、獣医師も問題なしと判断したなら、次の2つを疑います。どちらか一方とは限らず、両方が重なっていることもあります。

1つめは体質です。 タフツ大学の記事は、犬は人と同じように食への熱心さ、代謝の速さ、食べ物の好みが大きく異なると説明しています。ラブラドール・レトリーバーの多くは「食べるために生きている」タイプ、スタンダード・プードルの多くは「生きるために食べる」タイプといった犬種の傾向はあるものの、犬種の間でも同じ犬種の中でも個体差は大きいとされます。食への熱心さは遺伝だけでなく、しつけ、子犬のころの経験、食事、多頭飼いか1頭飼いかなど、さまざまな要因の影響を受けます(出典: Tufts「Some dogs live to eat…」前掲)。

同記事は、獣医師が問題なしと判断した場合に「生きるために食べる」タイプだと考えられる手がかりも挙げています。ほかは普段どおりで機嫌よく元気があること、体重がおおむね一定に保たれていること、背中などの筋肉が落ちていないことです。あわせて、犬の健康的で最適な体重は、多くの飼い主が思うより軽いことが多いとも述べています(出典: 同上)。つまり、食べる量が少ないこと自体が問題とは限りません。

ただし本記事では、体型(BCS)が9段階で4未満なら「体質」と判断しない方針をとります。上の表の受診目安と線をそろえるためです。

2つめは与えすぎです。 ここは見落とされやすいところです。VCAは、必ずそうだとは限らないとしながら、食が細い犬が同時に(少しあるいはかなり)太っていることは珍しくなく、その場合は与えすぎでお腹がいっぱいになっているために食べていない可能性があると説明しています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。「もっと食べさせたい」で量を増やすと、悪循環になりかねません。

確かめ方は1つです。おやつ・トッピング・薬と一緒に与えた食品まで含めて、実際に食べている量を数日分記録し、体重と体型の推移とあわせて見ます(記録のしかたは「変えたことは1つずつ、記録して比べる」で説明します)。そのうえで、今の1日量が体重・体型に見合っているかを確かめてください。

フード給与量計算ツールで、体重とフードのカロリーから1日量の目安を確かめる

リビングの床に立つヨークシャー・テリアの体側面に、しゃがんだ飼い主が手のひらを当てて肋骨のあたりを確かめている
「食べた量」より先に見るのは、元気・体重・体型です。手のひらで体側面に触れて、肋骨の感触を普段から覚えておきます。

そもそも犬の食いつきは何で決まる?

嗜好性(食いつきの良さ)の研究をまとめた査読論文は、次の点を挙げています(出典: Le Guillas G, Vanacker P, Salles C, Labouré H「Insights to Study, Understand and Manage Extruded Dry Pet Food Palatability」Animals 2024;14(7):1095)。

  • 最初にどちらのボウルから食べ始めるかは、匂いの魅力を反映するとされます。ただし同論文は、嗅覚の力は否定できないもののそれは感覚的な食体験の一部にすぎないとも述べています。製品の水分含量も重要な要素とされ、水分が高いほうが好まれると報告されています。粒の表面にコーティングされる脂肪、粒の食感・大きさ・形も好みに影響します。
  • 嗜好性試験を5日以上くり返す理由のひとつは、新しいものを好む傾向(ネオフィリア)や怖がる傾向(ネオフォビア)の影響を薄めることだとされます。なお、同程度の嗜好性の粒を比べたとき「めったに出ないほう」を多く食べる現象(anti-apostatic effect)は猫で観察された一方、犬では未確認と明記されています。

これらは製品開発や嗜好性試験の場で得られた知見で、「この要素を変えれば食べる」と読み替えられるものではありません。 好みには個体差があります。

一方、犬を対象とした指摘もあります。VCAは、フードの種類が多すぎることが、一部の犬に「好きな物が出るまで待つ」ことを学習させうると説明しています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。「食べないから別の物を出す」をくり返している場合は、ここを疑ってください。

ステップ1:食事の環境と時間を整える

いちばん手をつけやすく、費用もかからないのが環境です。

1. 飼い主の緊張を持ち込まない。 タフツ大学の記事は、飼い主が食べる量を気にしすぎて不安になると、その不安が犬に伝わり、犬が食事や食事の時間そのものを「何か嫌なこと」と結びつけてしまうことがあると説明しています。見分け方として、ペットシッターや別の家族が食事を担当したときに普通に食べるかを確かめる方法を挙げています(出典: Tufts「How Do I Get My Picky Pet to Eat?」前掲)。

2. 静かに、ひとりで食べられる場所にする。 同記事は、食事時のストレスを減らす工夫として、タイマー式の自動給餌器を使うこと、家の中の静かな別室に犬とフードを置いて1頭で食べさせることを挙げています(出典: 同上)。ひとりのほうが落ち着く犬と、そばに人がいるほうが食べる犬のどちらが多いかを示す資料は見つからないため、愛犬の反応を見て決めてください。

3. 時間を決めて、短い時間だけ出す。 VCAは、いつでも食べられるようにしておくのではなく、1日の決まった時間に出し、短い間だけ置く方法を挙げ、食べられる時間が限られていることを覚えると食べ方が良くなることがあるとしています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。食べ残しの扱いと保存の注意は別の記事で扱っています。

4. 食器を替えてみる。 タフツ大学の記事は、犬や猫が体調の悪かったときの記憶とフードを結びつけてしまう「食物嫌悪」に触れています。確かめる方法として挙げられているのは、まったく別のフードを、毎回新しい食器か使い捨ての食器で出すことです。古いフードの匂いが残った食器が手がかりになるのを避けるためです(出典: Tufts「How Do I Get My Picky Pet to Eat?」前掲)。

このうちこの段階で試せるのは食器のほうだけです。フードまで同時に替えると、後述の「変えるのは1つずつ」から外れ、切り替え手順(後述)も必要になります。食物嫌悪を疑うなら、フードの変更は獣医師に相談したうえでステップ3として行ってください。

静かな部屋の床に置かれた白いフードボウルからドライフードを食べているヨークシャー・テリアと、少し離れた場所で背を向けて座っている飼い主
じっと見守るのをやめ、静かな場所でひとりにしてみます。別の家族が担当したときに食べるかどうかも、見分ける手がかりになります。

ステップ2:与え方を変える(トッピングは「ご褒美」にしない)

環境を整えても変わらないときは、出し方を見直します。ここで順番を間違えないことが大切です。

トッピングは、拒否される前に混ぜます。 タフツ大学の記事は、味を良くするものを試すなら、フードを一度拒否した後の「ご褒美」としてではなく、拒否する機会を与える前に足すのが良いとしています(出典: 同上)。残してから足すやり方は、「残せばもっと良い物が出る」という流れを作りかねません。

足す量は1日の総カロリーの10%以内にとどめます。 同記事は、主食以外の食品から取るカロリーを1日の総カロリーの10%以下に抑える「ペット栄養の黄金律」を挙げ、必要な栄養素を適切な量と割合で与えられなくなるリスクを下げるためだと説明しています(出典: 同上)。米国動物病院協会(AAHA)のガイドラインも同じ10%以下という考え方を示しています(出典: American Animal Hospital Association「2021 AAHA Nutrition and Weight Management Guidelines」JAAHA 57(3):153–174, 2021)。VCAも、トッピングは控えめに使い、安全な食品を選び、1日の必要カロリーの範囲に収めるよう案内しています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。

何を足すかには注意が必要です。 タフツ大学の記事は、たんぱく質の制限がない犬向けの例として刻んだ鶏むね肉、手作りの鶏のスープ、低脂肪・食塩無添加のカッテージチーズを挙げつつ、市販のスープ類は塩分が高いことが多く、玉ねぎやにんにくを含むことが多いと注意しています(出典: Tufts「How Do I Get My Picky Pet to Eat?」前掲)。犬に危険な食材は別記事とツールで確認してください。

温めて匂いを立たせる工夫と、その好みに個体差があることは夏の食欲不振の記事で扱っています。

キッチンのはかりに載せた白い小皿にほぐした鶏肉を少量だけ量る飼い主の手元と、床に座って見上げているヨークシャー・テリア
トッピングは残された後のご褒美ではなく、出す前に混ぜます。量は1日の総カロリーの10%以内に収まるよう、目分量ではなく量って決めます。

ステップ3:フードそのものを見直す

ここまで試して変わらないとき、はじめてフードを検討します。銘柄を替える前に確認したいのは次の4点です。

1. その食事は「総合栄養食」ですか。 ペットフード公正取引協議会は、ペットフードを目的別に分けて表示すべき項目を定めています。「その他の目的食」のうち一般食・副食には、一日に必要な栄養を満たすために別途栄養補給する必要がある旨、または同時に与える必要があるペットフード(総合栄養食等)の名称などを併記するとされています(出典: ペットフード公正取引協議会「03.ペットフードの目的について」)。タフツ大学の記事も、栄養が完全でない製品や、**獣医栄養専門医(board certified veterinary nutritionist)**が設計していない手作り食が増えていることに触れ、栄養素の不足や偏りは食欲に悪影響を与えたり、体重維持を難しくしたりしうると述べています(出典: Tufts「Some dogs live to eat…」前掲)。

2. カロリー密度と形態を確かめる。 同記事は、カロリーの低いフードでは、犬がそれを気に入っていても体重維持に必要な量を食べきれないことがあると指摘しています。米国の市販ドライの例として1カップあたり約300kcalから700kcal超までの幅を挙げ、缶詰や冷蔵・冷凍の調理済みフードは水分が多いためカロリーが低く、そのうち冷蔵・冷凍の調理済みフードは1カップ200kcal未満のことが多いとしています。形態の好みも一律ではなく、多くの飼い主はウェットのほうを犬が好むと考えているが、ドライを好む犬もいるとされます(出典: 同上)。日本の製品でも幅があるため、パッケージのkcal表示で確かめてください。

3. パッケージの給与目安だけに頼らない。 同記事は、給与目安の正確さはメーカーによって差があり、表示された量が愛犬に合っているとは限らないとしています。あわせて、味の良いフードはマーケティングではなく客観的な基準で、獣医師や獣医栄養専門医と選ぶことをすすめています(出典: 同上)。

4. 開封してから時間がたっていませんか。 ペットフード協会は、ペットフードには油脂成分が多く含まれ、油脂は時間がたてば酸化や劣化が避けられず、酸化が進むと嗜好性が低下したり健康に悪い影響を及ぼすことがあると説明しています(出典: 一般社団法人ペットフード協会「ペットフードと添加物」)。賞味期限も常温・未開封など、定められた方法で保管した場合の期間です(出典: ペットフード公正取引協議会「06.賞味期限について」)。「新しい袋に替えたら食べた」なら、銘柄ではなく保存状態の問題かもしれません。

なお、好みがはっきり分かったなら替え続ける必要はありません。VCAは、特定の食感や風味を本当に好む犬では、気に入るものが分かったらそのタイプを一貫して続けるという考え方を示しています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。

フードを替えるなら、何日かけますか?

替えると決めたら、切り替えは急がないでください。AAHAは、消化器が適応できるよう1週間以上かけて徐々に切り替えるという考え方を示し、頻繁な食事の変更は消化器の不調を招くうえ、どの食材が合わないかの切り分けを難しくするとも述べています(出典: American Animal Hospital Association「How to Choose the Right Food for Your Pet」)。2021年の栄養ガイドラインは、4〜7日かけた食事の変更が消化器症状の発生を減らしうるとしています(出典: 前掲 2021 AAHA ガイドライン)。

タフツ大学の記事は、少なくとも1週間かけて新しいフードの割合を増やすことをすすめ、切り替えの速さには個体差があり、朝食から夕食で問題なく替えられる犬もいれば、胃腸の不調を避けるために4〜6週間必要な犬もいるとしています。便がゆるくなった場合は、問題が出なかった直前の割合で1〜2日とどまり、症状が落ち着いてから続けること、嘔吐が続く・水のような下痢・痛そう・元気がない場合は獣医師に連絡することも示されています(出典: Tufts University Cummings School「How do I switch my pet’s food?」2019年11月24日)。

日ごとの割合とグラム数は、ツールで表にできます。

フード切り替えスケジュールで、日ごとに混ぜる割合と量を作る

無地の小鉢2つに分けたドライフードを1つの白いボウルへ移している飼い主の手元と、床に座って見上げているヨークシャー・テリア
今までのフードと新しいフードは、決めた割合どおりに混ぜます。便がゆるくなったら、問題が出なかった割合まで戻して日数を延ばします。

変えたことは1つずつ、記録して比べる

同時に3つ変えると、何が効いたのか分からなくなります。タフツ大学の記事は、味や食感の違うタイプを試しながら愛犬の好みを日記に記録して追うことをすすめています(出典: Tufts「How Do I Get My Picky Pet to Eat?」前掲)。VCAも、今どれだけのカロリーを摂っているか分からない場合は、おやつや薬と一緒に与えた食品まで含めて、3〜5日間すべて記録する方法を挙げています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。

記録するのは次の4点で足ります。日付、出した量(グラム)、残した量(グラム)、変えたこと(場所・食器・時間・トッピング・銘柄のどれか1つ)。「少しだけ食べた」ではなく数字で残すと、思い込みではなく変化で判断できます。フードの量はキッチンのはかりで、体重は同じ体重計・同じ時間帯で、それぞれ定期的に記録してください(測る頻度はかかりつけの指示に合わせてください)。

テーブルの上で無地のノートに鉛筆で書き込む飼い主の手元と、ドライフードが残った白いボウル、床に伏せているヨークシャー・テリア
変えたことは一度に1つだけ。日付・出した量・残した量・変えた点を書き留めると、受診時にも経過を正確に伝えられます。

出した量と残した量を数字で残す

食いつきの変化は「少しだけ食べた」では追えません。出した量と残した量を同じ単位で記録すると、変えたことが効いたのかを日ごとに比べられます。価格や在庫は変動するため、購入前に各販売ページで最新情報をご確認ください。

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計量器

タニタ デジタルクッキングスケール KD-321

最小表示0.1g、最大計量3kgのデジタルスケール。計算したフードやおやつの量を、目分量ではなくグラムで確認する用途に使います。

出した量と食器に残った量をそれぞれ量り、1日の摂取量とトッピングの10%枠を同じ条件で記録する用途に合います。

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記録は原因を判断するためではなく、獣医師に経過を正確に伝えるためのものです。意図しない体重減少や元気の低下があるときは、記録を続ける前に動物病院へご相談ください。

はっきりした根拠が見つからないこと

食いつきの話題には、よく語られるのに裏づけが弱いものがあります。今回確認した一次〜準一次資料の範囲では、次の点について明確な根拠は見つかりませんでした。記事として断定はしません。

  • 犬の何割が偏食なのか(統一された定義による代表的な調査は見つかりませんでした)
  • 食器の材質・色・形・高さを変えれば食いつきが良くなるという一般則
  • 犬に最適な提供温度の具体的な数値(何℃が良いかを決められる犬の比較試験は見つかりませんでした)
  • すべての犬に好まれる粒の大きさ・形・硬さ
  • 「何分で下げる」の最適値(時間を決める考え方には裏づけがありますが、分数を比べた強い研究は見つかりませんでした)

やってはいけないこと

  • 食べるまで食事を抜いて待つ。 これをすすめる獣医資料は見当たらず、本記事では安全側に立って推奨しません。若齢の超小型犬については、Merck獣医マニュアルが若齢の低血糖の原因のひとつとして「超小型犬の一時的な絶食性低血糖(transient fasting hypoglycemia in toy breeds)」を挙げています(出典: Merck Veterinary Manual「Miscellaneous Liver Diseases in Small Animals」)。成犬でも安全という意味ではありません。なお、猫で問題になる肝リピドーシスをそのまま犬の説明に当てはめることもできません(出典: American Animal Hospital Association「2018 AAHA Diabetes Management Guidelines」)。
  • 糖尿病の犬で「様子を見る」。 食べていないなら、直ちに処方した獣医師へ連絡し、事前に指示されている対応に従ってください。 コーネル大学の犬の健康センターは、食事を抜いた場合は低血糖を招きうるためインスリンを投与せず、食べていないなら獣医師に連絡するよう案内しています(出典: Cornell Riney Canine Health Center「Diets for diabetic dogs」)。投薬の判断は個別の指示が優先です。
  • 口へ流し込む強制給餌。 AAHAの2021年ガイドラインは、食物への嫌悪と誤嚥のリスクから、口へのシリンジ給餌はもはや推奨されないとしています(出典: 前掲 2021 AAHA ガイドライン)。
  • 食欲を出す薬やサプリメントを自己判断で使う。 使うかどうかは獣医師の判断です。持病や併用薬との関係もあります。人用の薬や他の動物の残薬は与えないでください。
  • 拒否されるたびに新しいフードを開ける。 種類が多すぎることは、一部の犬に「好きな物が出るまで待つ」ことを学習させうるとされます(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。切り替えを急げば消化器症状のリスクも上がります。
  • 人間の食事をそのまま足す。 ネギ類・チョコレート・キシリトールなどは犬に危険で、脂肪の多い食事も避けたい対象です。迷ったらツールで確認してください。

食べてはいけない物チェッカーで、食材の危険度を確認する

よくある質問

ウェットフードに替えれば食べるようになりますか?

食べるようになる犬はいますが、確実ではありません。嗜好性の研究では水分が高いほうが好まれると報告される一方(出典: Le Guillas ら、前掲)、タフツ大学の記事はドライを好む犬もいるとしています。さらにウェットは水分が多いためカロリーが低く、必要なカロリーを満たす量を食べきれない場合があります(出典: Tufts「Some dogs live to eat…」前掲)。試すなら総合栄養食を選び、切り替え手順を守り、体重の推移を見てください。

犬が1食食べなかったとき、そのままにしていいですか?

飼い主が意図的に食事を出さずに待つことは、本記事ではおすすめしません。 そのうえで、犬が自分から1食食べなかった場合の扱いは別です。VCAは、健康で、適正な体重を保ち、便が正常で、元気もある犬ならたまに1食食べなくてもよいとし、空腹のほうが食欲が出ることもあるとしています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。この条件を外れる犬(子犬・超小型犬・持病のある犬・意図せず体重が減っている犬)には当てはまりません。急に食べなくなって原因が分からないときの受診の目安は別の記事で扱っています。

毎日違うフードをローテーションしてもいいですか?

食いつきのために毎日替えることはおすすめしません。切り替えには少なくとも1週間かける前提があり(出典: Tufts「How do I switch my pet’s food?」前掲)、AAHAも頻繁な変更は消化器の不調と原因の切り分けの難しさにつながるとしています(出典: AAHA「How to Choose the Right Food for Your Pet」前掲)。栄養や治療の目的でローテーションを考えるなら、獣医師に相談してください。

手作りごはんにすれば食べてくれますか?

食感や味を好む犬はいますが、栄養面の制約が大きい方法です。VCAは、手作り食にはビタミン・ミネラルの補助が必要で、人用の食材だけで犬の栄養要求量を満たすことは不可能だとしています。加えて、ネット上のレシピの多くは獣医栄養専門医や獣医師が設計したものではなく、必須栄養素のいずれかが不足していることが確認されているとしています(出典: VCA「Feeding Picky Eaters」前掲)。検討するなら、かかりつけの獣医師か獣医栄養専門医に相談してください。

療法食を食べてくれません。どうすればいいですか?

自己判断で普段のフードへ戻したり、トッピングを足したりせず、処方した獣医師に相談してください。療法食は獣医師の指導に基づいて与えるものとされており(出典: ペットフード公正取引協議会「03.ペットフードの目的について」前掲)、代わりの選択肢や与え方の工夫は治療の方針とあわせて決める必要があります。

出典

免責

本記事は、動物病院で健康上の問題がないと確認できている犬を対象とした一般的な情報提供を目的としており、獣医師による診断・治療の代替ではありません。示した割合・日数・数値はいずれも目安で、年齢・犬種・体格・持病によって前後します。

食欲の低下は多くの病気に共通するサインです。急に食べなくなった、元気がない、嘔吐や下痢がある、意図せず体重が減っている、水を飲めない場合は、本記事の工夫を試さず、夜間救急を含む動物病院へご相談ください。

療法食を食べている、持病がある場合は、フードやトッピングを自己判断で変えず、処方した獣医師にご相談ください。サイト全体の方針は免責事項をご確認ください。

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